特定在留カードとは、在留カードとマイナンバーカードの機能を一体化させた新しいカードです。広島で外国人の方のビザ手続きをサポートする行政書士として、特定在留カードの制度概要と実務上の注意点をわかりやすく解説します。令和8年6月14日からの運用開始を前に、メリットだけでなくデメリットも正しく理解することが大切です。便利に見える一方で、通常の在留カードとは異なる手続き上の制約があります。
特定在留カードの基本的な仕組み

特定在留カードは、改正法(令和6年法律第59号)に基づく新制度です。改正法の公布日は令和6年6月21日で、運用開始は令和8年6月14日(日)が予定されています。地方出入国在留管理局では、翌開庁日である令和8年6月15日(月)から申請受付が開始されます。
中長期在留者が希望すれば、在留カードとマイナンバーカードの機能を1枚に統合できる仕組みです。財布の中身を減らせる利便性は大きな魅力といえます。ただし、便利さの裏側には実務上の落とし穴もあります。具体的には、交付日数や申請方法、マイナンバー機能の制限など、通常の在留カードにはない注意点が存在します。
特定在留カードの対象者
対象となるのは、住民基本台帳に記録されている中長期在留者または特別永住者です。つまり、マイナンバーカードの交付要件を満たす方が申請可能となります。新規上陸時点では特定在留カードを取得できない点にも注意が必要です。
特定在留カードの有効期間
永住者や高度専門職2号など在留期間の定めのない方の場合、有効期間は交付日後の10回目の誕生日までとなります。申請時に18歳未満の方は、交付日後の5回目の誕生日までが有効期間です。また、「在留期間」「許可の種類」「許可年月日」「交付年月日」はICチップのみに記録され、マイナンバーはカード裏面に記載される仕様です。
特定在留カードの交付までの日数
特定在留カードの最大の注意点の1つが、交付までの日数です。通常の在留カードに比べて、交付までに10日ほど長くかかります。そのため、在留期限ギリギリでの申請は大きなリスクとなります。
具体的には、在留期間更新許可申請の結果通知から、カード発行までに追加の日数が必要です。実際に更新期限が迫っている方は、通常の在留カード申請を選択した方が安全な場合もあります。加えて、余裕を持ったスケジュールで申請することが何より重要です。
| 比較項目 | 通常の在留カード | 特定在留カード |
|---|---|---|
| 交付までの日数 | 標準的な日数 | 通常より約10日長い |
| 空港での受取 | 可能 | 不可 |
| 対象者 | 中長期在留者全般 | 住基台帳記録者 |
| 運用開始日 | 従来から運用中 | 令和8年6月14日 |
特定在留カードと在留申請オンラインシステムの関係
オンライン申請を日常的に利用している方にとって、見落とせない制約があります。当面の間、在留申請オンラインシステムを利用される場合には、特定在留カード交付申請を受け付けることができません。つまり、オンラインの利便性と特定在留カードの一体化機能は、現時点では両立しません。
一方で、特定在留カードの交付を希望する場合は、窓口申請が必須となります。在留資格の変更や更新とあわせて特定在留カードを取得したい方は、最初から窓口申請を選択する必要があります。詳しくは出入国在留管理庁の公式ページをご確認ください。
窓口申請を選ぶ際の実務ポイント
広島で就労ビザの更新をされる方は、広島出入国在留管理局の窓口で申請することになります。申請窓口の混雑状況により、待ち時間が長くなる可能性があります。そのため、平日の早い時間帯での来庁が推奨されます。
就労ビザの詳しい要件については、就労ビザの詳細解説はこちらで解説しています。
特定在留カードのマイナンバー機能と特例期間の注意点
メリットとデメリットのバランスを考える上で、最も重要なポイントがここです。特定在留カードについても、マイナンバーカード機能に係る有効期間の満了日は、本来の在留期間の満了日までとなります。つまり、在留期間更新申請中の「特例期間」に入ると、マイナンバー機能は使えなくなります。
特例期間とは、在留期限を過ぎても申請中であれば2か月間は合法的に在留できる制度です。ところが、この期間中はマイナンバー機能が自動的に停止します。結果として、市区町村で別途手続きが必要になるケースが発生します。
特例期間中に必要となる主な手続き
具体的には、以下のような場面で追加対応が求められます。
- 住民票の取得:コンビニ交付が利用できない
- 各種行政サービス:マイナポータルでの手続きに制限
- 本人確認:別の身分証明書の併用が必要
- 銀行・契約手続き:電子証明書が機能しない
したがって、在留期間更新は特例期間に入る前に余裕を持って申請することが重要です。永住許可を取得していれば更新の手間がなくなるため、要件を満たす方には検討をおすすめします。永住者であれば特定在留カードの有効期間も10年間と長く、更新の負担が大幅に軽減されます。永住申請については永住許可の詳細はこちらで解説しています。
特定在留カードは空港で受け取れない
新規来日者の方にとって意外なポイントが空港での受取制限です。新規上陸の際、空港では在留カードを交付することとなります。つまり、初来日時に特定在留カードを直接受け取ることはできません。
実際の流れとしては、まず空港で通常の在留カードが交付されます。その後、住居地の届出やマイナンバーカードの取得手続きを経て、改めて特定在留カードへの切替申請を行います。この二段階のプロセスを理解しておくことで、来日後のスケジュールを計画的に組めます。
新規来日から特定在留カード取得までの流れ
来日後の実務的な流れは以下のとおりです。
- 空港で通常の在留カードを受取
- 住居地を定めて市区町村に住民登録
- マイナンバーカードの交付申請
- 特定在留カードの交付申請(窓口)
- 特定在留カードの受取
配偶者ビザで来日される方も同様の流れとなります。配偶者ビザの手続きについては配偶者ビザの詳細はこちらをご参照ください。
特定在留カードの紛失時は手続きが二重になる
紛失時の対応も、通常の在留カードとは異なります。マイナンバー機能の一時停止手続きと、在留カードの再交付手続きの両方が必要です。さらに、再交付時はまず通常の在留カードが交付される点も、読者の皆様には意外な情報かもしれません。
つまり、紛失時には一度マイナンバー機能を失うことになります。再び特定在留カードを取得するには、通常の在留カード再交付後に、改めて特定在留カードへの切替申請が必要です。そのため、日常的な管理には十分な注意を払うことが求められます。
紛失時の対応手順
紛失に気づいたら、以下の順序で対応します。
- まず、マイナンバー総合フリーダイヤルに連絡してカード機能を一時停止
- 次に、警察に遺失届を提出
- 続いて、出入国在留管理局で在留カードの再交付を申請
- 最後に、通常の在留カード受取後に特定在留カード切替を申請
このように、紛失から完全な復旧までには相応の時間と手間がかかります。なお、帰化申請を検討されている方であれば、そもそも在留カード自体が不要となります。帰化については帰化申請の詳細はこちらで詳しく解説しています。
特定在留カードを申請する前に確認すべきこと
以上のことから、特定在留カードは便利な一方で、実務上の制約を理解した上で選択すべき制度といえます。具体的には、交付日数の長さ、オンライン申請との非互換性、特例期間中のマイナンバー機能停止、空港受取不可、紛失時の二重手続きといった5つの注意点があります。
まとめると、以下のような方には特定在留カードがおすすめです。
- 在留期限まで十分な余裕がある方
- マイナンバーカードを日常的に活用している方
- 窓口申請が可能な方
- カードの管理に自信がある方
一方で、在留期限が迫っている方やオンライン申請を優先したい方は、通常の在留カードの継続使用が無難な選択となります。令和8年6月の運用開始に向けて、ご自身の状況に合った選択を検討されることをおすすめします。