2026年1月1日に施行された行政書士法改正は、入管業務に大きな影響を与えています。デジタル化が進む現代において、外国人の在留資格申請や帰化申請などの手続きがオンライン化され、行政書士の役割も大きく変化しています。この記事では、法改正の内容とデジタル化が入管業務にもたらす影響について詳しく解説します。
行政書士法改正の3つの柱
令和7年6月に成立した行政書士法の一部を改正する法律は、デジタル社会への対応を明確に打ち出した点が特徴です。主な改正内容は以下の3つです。
1. 行政書士の「使命」の明記
行政書士法第1条に、行政書士の使命が明確に規定されました。
行政書士は、その業務を通じて「行政手続の円滑な実施に寄与する」という使命を持つと定められています。これにより、行政と国民の架け橋としての役割が法律上明確になりました。
2. 「職責」の新設とデジタル社会への対応
行政書士法第1条の2に新たに「職責」の規定が設けられました。
特に注目すべきは、「デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の措置を通じて、国民の利便性の向上及び事業の効率化を図る」という努力義務が追加された点です。
したがって、行政書士には積極的なデジタル化への対応が求められるようになりました。
3. 業務制限の明確化
行政書士法第19条および第21条の2が改正され、無資格者の業務制限が強化されました。
「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が追加され、コンサルティング料などの名目で実質的に書類作成業務を行うことも違法となりました。
そのため、入管業務においても、無資格者が報酬を得て申請書類を作成する行為は明確に禁止されることになりました。
入管業務のデジタル化の現状

出入国在留管理庁は、在留申請のオンライン化を積極的に推進しています。令和8年1月には、新しい在留申請オンラインシステムが稼働を開始しました。
在留申請オンラインシステムの主な機能
新しいシステムでは、以下のような改善が行われました。
- 添付できるデータ容量の拡大
- 複数ファイルの同時添付が可能に
- 申請項目の一時保存機能の実装
- 利用者IDの有効期間を1年から3年に延長
- 24時間365日いつでも申請が可能
これらの機能により、申請者の利便性が大きく向上する方向に進んでいます。
オンライン申請を利用できる方
在留申請オンラインシステムを利用できる対象者は、次の通りです。
| 対象者 | 条件 |
|---|---|
| 所属機関の職員 | 申請等取次者の承認が必要 |
| 弁護士・行政書士 | 申請等取次者として承認または届出済 |
| 公益法人の職員 | 申請等取次者として承認または届出済 |
| 登録支援機関の職員 | 申請等取次者として承認または届出済 |
| 外国人本人 | 中長期在留者で16歳以上 |
| 法定代理人 | 法定代理人としての資格を有する |
| 親族 | 配偶者・子・父母など |
出入国在留管理庁の在留申請オンライン手続のページで詳細を確認できます。
行政書士に求められるデジタル対応
行政書士法改正により、入管業務を扱う行政書士には以下のような対応が求められるケースが増えています。
オンライン申請システムの習熟
まず、在留申請オンラインシステムの操作に習熟することが重要です。
システムの更新に伴い、新しい機能や操作方法を継続的に学習する姿勢が必要となる可能性があります。
また、依頼者に対してオンライン申請のメリットや手続きの流れを分かりやすく説明する能力も求められます。
電子申請への完全対応
紙ベースの申請から電子申請への移行は、今後さらに加速すると考えられます。
そのため、電子データの作成・管理、PDF化、電子署名などのスキルが不可欠になる見込みです。
さらに、令和8年1月からは在留資格認定証明書の電子交付も開始されており、電子データの取り扱いに関する知識が一層重要になっています。
業務管理のデジタル化
顧客管理、書類管理、スケジュール管理などもデジタル化が求められる傾向にあります。
- クラウド型業務管理ツールの導入
- 顧客とのオンラインコミュニケーション(Zoom、Teams等)
- 電子契約システムの活用
- データバックアップとセキュリティ対策
これらのツールを活用することで、業務効率化と顧客サービス向上の両立が可能となる可能性があります。
無資格者の業務制限強化による影響
今回の行政書士法改正で最も注目されているのが、無資格者の業務制限の明確化です。
違法となる行為の具体例
以下のような行為は、行政書士資格を持たない者が報酬を得て行うと違法となります。
- 在留資格申請書の作成代行
- 永住許可申請書類の作成
- 帰化申請書類の作成
- 技能実習や特定技能の申請書類作成
- コンサルティング料の名目での書類作成業務
つまり、たとえ「書類作成料」ではなく「相談料」や「アドバイス料」という名目であっても、実質的に書類作成を行っていれば違法と判断される可能性があります。
登録支援機関や人材紹介会社への影響
特定技能制度の登録支援機関や、外国人労働者を扱う人材紹介会社は、この改正に特に注意が必要です。
従来、グレーゾーンとされてきた支援業務の一環としての書類作成も、今後は明確に違法となる可能性があります。
そのため、登録支援機関は支援計画の実施に専念し、在留資格申請に関する書類作成は行政書士に委託する方向に進むケースが増えています。
罰則の強化
違反した場合の罰則は以下の通りです。
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| 無資格での業務実施 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
| 法人の場合 | 法人に対しても100万円以下の罰金 |
違反行為が発覚した場合、個人だけでなく法人も処罰の対象となる点に注意が必要です。
入管業務における今後の変化
デジタル化と法改正により、入管業務は大きく変化する見込みです。
審査の効率化と厳格化
オンライン申請の普及により、審査プロセスにも変化が起こる可能性があります。
- AIによる書類の整合性チェックの導入
- 過去の申請履歴との自動照合
- 不備のある申請の早期発見
- 審査期間の短縮化
デジタル技術の活用により、書類の整合性チェックや過去の申請履歴との照合がより機械的・効率的に行われる方向に進んでいます。
その結果、審査の厳密化が進む可能性も考えられます。
申請書類の電子化推進
令和8年1月からは、在留資格認定証明書の電子交付が開始されました。
今後は、以下のような書類も電子化される見込みです。
- 在留カードの電子化・スマートフォン連携
- 申請書類の完全ペーパーレス化
- マイナポータルとの連携
- 外国語による自動翻訳機能の拡充
これらの変化により、24時間いつでもどこからでも申請できる環境が整いつつあります。
行政書士の役割の変化
デジタル化が進むことで、行政書士の役割も変化する傾向が見られます。
単純な書類作成業務は減少する一方で、以下のような専門性の高い業務の重要性が増すと考えられます。
- 複雑なケースへの対応(過去に不許可歴がある、複数の在留資格に該当する可能性があるなど)
- 法的リスクの分析とアドバイス
- 申請戦略の立案
- 不許可事例への対応
- 企業の外国人雇用コンプライアンス支援
つまり、行政書士にはより高度な専門知識とコンサルティング能力が求められる方向に進んでいます。
実務上の注意点
行政書士法改正とデジタル化に対応するため、実務上いくつかの注意点があります。
1. オンライン申請の利用範囲の確認
すべての在留資格がオンライン申請に対応しているわけではありません。
申請前に、出入国在留管理庁の公式サイトで「オンラインで申請可能な申請種別及び在留資格」を確認する必要があります。
また、在留期限の最終日にはオンライン申請ができない点にも注意が必要です。
2. 電子データの適切な管理
個人情報を含む電子データを扱う際は、セキュリティ対策が不可欠です。
- パスワード管理の徹底
- データの暗号化
- 定期的なバックアップ
- ウイルス対策ソフトの導入
- クラウドサービス利用時のセキュリティ確認
顧客の重要な個人情報を扱う以上、情報漏洩は絶対に避けなければなりません。
3. 継続的な学習の重要性
デジタル技術は日々進化しており、新しいシステムや機能が次々と登場しています。
そのため、行政書士には継続的な学習姿勢が求められる傾向があります。
- 出入国在留管理庁の最新情報のチェック
- オンラインシステムの操作マニュアルの確認
- ITツールの活用方法の習得
- セミナーや研修への参加
これらの学習を通じて、常に最新の知識と技術を身につけることが重要です。
4. 顧客への説明責任
オンライン申請を利用する際は、顧客に対して以下の点を明確に説明する必要があります。
- オンライン申請と窓口申請の違い
- オンライン申請のメリットとデメリット
- 申請状況の確認方法
- 審査期間の目安
- 不備があった場合の対応方法
透明性のある説明により、顧客との信頼関係を構築することが可能となります。
まとめ:デジタル時代の行政書士に求められること
2026年1月に施行された行政書士法改正とデジタル化の波は、入管業務に大きな変革をもたらしています。
行政書士には、以下の3つの要素が求められる方向に進んでいます。
1. デジタルスキルの向上
オンライン申請システムの習熟、電子データの適切な管理、業務のデジタル化など、ITスキルの習得が不可欠となっています。
2. 専門性の深化
単純な書類作成ではなく、複雑なケースへの対応や法的リスクの分析など、高度な専門知識が必要となる可能性があります。
3. コンプライアンス意識の徹底
無資格者の業務制限強化により、行政書士の独占業務が明確化されました。
そのため、資格を持つ専門家としての責任と倫理観がより重要になっています。
デジタル化は、決して行政書士の仕事を奪うものではありません。むしろ、専門家としての価値を高め、より質の高いサービスを提供する機会と捉えることができます。
入管業務においては、法律の専門知識とデジタル技術を組み合わせ、依頼者に最適なソリューションを提供できる行政書士が求められる時代となっています。
専門家へのご相談をお勧めします
行政書士法改正やオンライン申請への対応、在留資格申請でお困りの方は、入管業務に精通した行政書士にご相談されることをお勧めします。
複雑化する入管手続きに対応するためには、最新の法改正情報とデジタル技術の両方に精通した専門家のサポートが有効です。
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