外国人雇用を検討する際、「特定技能」と「技能実習」の違いが分からず悩んでいる企業担当者の方は多いのではないでしょうか。実は、この2つの制度は目的も仕組みも大きく異なります。この記事では、特定技能と技能実習の違いを9つのポイントで徹底比較し、どちらの制度を選ぶべきか判断する材料をご提供します。
特定技能と技能実習の制度目的の違い
そもそも、特定技能と技能実習では制度の根本的な目的が異なります。この違いを理解することが、両制度を正しく活用する第一歩となります。
技能実習制度の目的:国際貢献
技能実習制度は、開発途上国等への国際貢献を目的としています。具体的には、日本で習得した技能・技術・知識を母国に持ち帰り、母国の経済発展に貢献してもらうことを目指しています。
したがって、技能実習生は日本で学んだスキルを自国で活かすことが前提となっており、あくまでも「人材育成」が制度の中心にあります。
特定技能制度の目的:人手不足対策
一方、特定技能制度は日本国内の深刻な人手不足を解消するために創設されました。即戦力となる外国人材を受け入れ、労働力として活用することが主な目的です。
つまり、特定技能は最初から「労働力の確保」を目的としており、技能実習とは制度設計の根幹が異なります。
在留期間の違い

特定技能と技能実習では、日本に滞在できる期間にも違いがあります。
技能実習の在留期間
技能実習は、基本的に最長5年間の在留が可能です。内訳は以下の通りです。
- 技能実習1号:1年以内
- 技能実習2号:2年以内
- 技能実習3号:2年以内
合計で最長5年間、技能実習生として日本に滞在することができます。
特定技能の在留期間
特定技能1号の場合、通算で最長5年間の在留が認められています。ただし、特定技能2号に移行できれば、在留期間の上限はなくなり、更新を繰り返すことで事実上永続的に日本に滞在することが可能です。
さらに、特定技能2号では家族の帯同も認められるため、より安定した生活基盤を築くことができます。
転職・職場変更の可否
この点は、特定技能と技能実習で最も大きな違いの一つです。
技能実習:原則として転職不可
技能実習制度では、技能実習生は受入機関(実習実施者)での実習が前提となっており、原則として転職は認められていません。
これは、技能実習計画に基づいて特定の技能を習得することが目的であり、実習先を変えることは制度の趣旨に反するためです。
特定技能:同一分野内での転職可能
一方、特定技能では同一分野内であれば転職が認められています。ただし、転職する際には在留資格変更許可申請などの手続きが必要となります。
この転職の自由度の高さが、特定技能制度の大きな特徴です。実際に、より良い労働条件を求めて転職する特定技能外国人も増えています。
受入れ人数の制限
技能実習:人数枠あり
技能実習制度では、受入機関の常勤職員数に応じて受入れ可能な技能実習生の人数に上限が設けられています。例えば、常勤職員数が50人以下の企業では、実習生の受入れ人数にも制限があります。
特定技能:人数制限なし(原則)
特定技能制度では、原則として受入れ人数に上限はありません。ただし、分野によっては一定の制限が設けられている場合もあります。
この点では、企業の人手不足の状況に応じて柔軟に外国人材を受け入れることができます。
求められる技能水準の違い
技能実習:技能水準の要件なし
技能実習制度では、入国時点での技能水準や日本語能力の要件は基本的にありません。日本に来てから技能を学ぶことが前提だからです。
特定技能:一定の技能と日本語能力が必須
特定技能制度では、相当程度の技能水準と日本語能力が求められます。具体的には、各分野の技能試験と日本語試験に合格する必要があります。
ただし、技能実習2号を良好に修了した外国人は、これらの試験が免除されます。そのため、技能実習から特定技能への移行はスムーズに行われることが多いです。
家族帯同の可否
技能実習:家族帯同不可
技能実習制度では、家族の帯同は認められていません。技能実習生は単身での来日が原則です。
特定技能:1号は不可、2号は可能
特定技能1号では家族の帯同は認められませんが、特定技能2号に移行すれば配偶者や子どもを「家族滞在」の在留資格で呼び寄せることが可能になります。
この点も、長期的に日本で働きたい外国人にとって特定技能2号の大きな魅力となっています。
永住許可申請への道筋
技能実習:永住許可の要件にカウントされない
技能実習の在留期間は、永住許可申請における就労資格としての在留期間にカウントされません。つまり、技能実習だけでは永住権取得への道筋が開けないということです。
特定技能:2号なら永住許可の対象に
特定技能1号も技能実習と同様、永住許可の要件となる就労期間にはカウントされません。しかし、特定技能2号の在留期間は就労資格としてカウントされるため、永住許可申請への道が開けます。
令和6年末時点の在留者数データ
出入国在留管理庁が発表した令和6年末現在の統計によると、在留外国人数は以下の通りです。
| 在留資格 | 人数 | 前年比増減 |
|---|---|---|
| 技能実習 | 456,595人 | +52,039人 |
| 永住者 | 918,116人 | +26,547人 |
| 技術・人文知識・国際業務 | 418,706人 | +56,360人 |
| 留学 | 402,134人 | +61,251人 |
技能実習は依然として多くの外国人が利用している在留資格であり、日本の産業を支える重要な制度となっています。
一方、特定技能制度は令和元年(2019年)に創設された新しい制度で、令和6年(2024年)時点で急速に在留者数が増加しています。今後も特定技能外国人の受入れは拡大する見込みです。
支援体制の違い
技能実習:監理団体による監理
技能実習制度では、監理団体が技能実習生の受入れから実習期間中の監理までを担います。監理団体は定期的な訪問指導や相談対応などを行い、技能実習生の保護と適正な実習実施を確保します。
特定技能:登録支援機関による支援
特定技能制度では、受入機関が特定技能外国人への支援義務を負います。ただし、登録支援機関に支援を委託することも可能です。
支援内容には、事前ガイダンス、住居確保、生活オリエンテーション、日本語学習機会の提供、相談対応などが含まれます。
どちらの制度を選ぶべきか
特定技能と技能実習、どちらを選ぶべきかは企業のニーズによって異なります。
技能実習が向いているケース
- 時間をかけて技能を教育し、人材を育成したい
- 国際貢献にも関心がある
- 監理団体のサポートを受けながら受入れを進めたい
特定技能が向いているケース
- 即戦力となる人材をすぐに確保したい
- 人手不足が深刻で早急な対応が必要
- 外国人材に長期的に働いてもらいたい
- 転職のリスクを許容できる
また、技能実習2号を修了した外国人を特定技能として引き続き雇用するという選択肢もあります。この場合、すでに日本の職場環境に慣れており、即戦力として活躍できるメリットがあります。
まとめ:特定技能と技能実習の違いを理解して最適な選択を
特定技能と技能実習の違いを9つのポイントで解説してきました。両制度は目的も仕組みも大きく異なるため、自社のニーズに合った制度を選択することが重要です。
特に重要なのは、「人材育成」を重視するか「即戦力確保」を重視するかという視点です。また、転職の可否や在留期間の違いも、長期的な人材戦略を考える上で見逃せないポイントです。
外国人材の受入れには、在留資格の選択から申請手続き、受入れ後の支援まで、専門的な知識が必要です。適切な手続きを行わないと、不許可や罰則のリスクもあります。
当事務所では、特定技能・技能実習の両制度に精通した行政書士が、企業様の外国人材受入れを全面的にサポートいたします。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。(登録申請中4月開業予定)