在留審査の厳格化とは?令和9年6月開始の新制度

「ビザの更新は毎回問題なく通っていたのに、突然不許可になったらどうしよう…」。そのような不安を感じている外国人の方は少なくないのではないでしょうか。
実は、令和9年(2027年)6月から在留審査の厳格化が始まる見込みです。この新制度では、国民健康保険料や国民年金保険料の納付状況が在留審査に直接反映される仕組みが導入される予定となっています。
具体的には、厚生労働省と出入国在留管理庁(入管庁)が連携します。そのうえで、社会保険料の滞納情報を行政間で共有する体制が構築されることになります。
したがって、これまで以上に公的義務の履行が問われる時代に入ると考えられます。この記事では、新制度の全体像と実務上の対策を行政書士の視点から詳しく解説いたします。
在留審査が厳格化される背景にある納付率の課題
では、なぜ今このタイミングで在留審査の厳格化が進められているのでしょうか。その背景には、外国人の社会保険料に関する深刻な納付率の問題があります。
国民健康保険料の納付率データ
厚生労働省の調査資料によると、令和5年度時点で国民健康保険における外国人被保険者数は約97万人です。これは全体の4.0%を占める数字となっています。
さらに注目すべきは収納率の差です。約150自治体を対象とした集計では、外国人の国保収納率は約63%にとどまっています。一方で、日本人を含めた全体の収納率は93%です。つまり、約30ポイントもの開きが生じている状況と言えます。
国民年金保険料の納付状況
加えて、国民年金保険料についても課題が浮き彫りになっています。厚生労働省が公表した令和6年度の納付状況では、外国人の最終納付率(令和4年度分保険料)は49.7%でした。
なお、第1号被保険者全体の最終納付率は84.5%となっています。そのため、外国人の納付率は全体平均を大きく下回っている現状が見て取れます。ただし、前年度と比較すると6.2ポイント上昇しており、改善の兆しも見られる状況です。
こうした背景から、社会保障制度の適正利用を徹底する目的で、在留審査における厳格化が進められる方向に動いていると考えられます。
在留審査の厳格化で対象となる手続きと条件
今回の新制度によって、具体的にどのような手続きが影響を受けるのでしょうか。ここでは対象範囲と不許可の条件を整理します。
審査厳格化の対象となる手続き
対象となるのは、すべての在留資格における以下の手続きです。
| 対象手続き | 内容 |
|---|---|
| 在留期間更新許可申請 | 現在の在留資格の期間を延長する手続き |
| 在留資格変更許可申請 | 別の在留資格に切り替える手続き |
主に影響を受ける外国人の方
特に影響が大きいのは、勤務先の社会保険に加入していない方です。具体的には、以下のような方が該当する可能性があります。
- 個人事業主として活動している方
- パートやアルバイト中心の働き方をしている方
- 留学生やその家族(家族滞在)の方
不許可となる条件
ただし、単なる滞納歴があるだけで即座に不許可とはならない見込みです。自治体からの督促や納付指導に応じず、未納を放置しているケースが対象と考えられています。
言い換えると、分納相談や免除申請など適切な対応をとっていれば、不利益処分を回避できる可能性が高いと言えます。
在留審査の厳格化で変わる情報連携の仕組み
新制度の最大のポイントは、審査方法そのものが根本的に変わることです。従来の仕組みとの違いを見ていきましょう。
マイナンバーを活用した在留審査の自動化
これまでの在留審査では、申請者本人が提出する納税証明書等で納付状況を確認していました。しかし、令和9年以降はマイナンバーを活用した「公共サービスメッシュ」による情報連携が開始されます。
出入国在留管理庁の政策懇談会資料によると、具体的なスケジュールは以下のとおりです。
| 開始時期 | 連携される情報 | 情報元 |
|---|---|---|
| 令和9年3月〜 | 市町村税情報(課税情報) | 市町村(総務省) |
| 令和9年6月〜 | 国民健康保険料の納付状況 | 市町村(厚生労働省) |
自治体から入管庁への滞納情報の共有
とりわけ重要なのは、情報が「プッシュ型」で共有される点です。本人が未納の事実を申告しなくても、入管庁側で滞納状況を正確に把握できるようになります。
なお、現行の「国民健康保険未納者の通報スキーム」は、全国1,719自治体のうちわずか68自治体(令和7年6月末時点)しか参加していませんでした。そのため、新制度によるシステム連携は、審査精度の飛躍的な向上につながると見込まれています。
結果として、未納を隠して申請しても必ず発覚する状態になると考えられます。
厳格化が各在留手続きに与える影響
在留審査の厳格化は、さまざまな手続きに波及する可能性があります。ここでは手続き別に影響を整理します。
在留期間更新・資格変更への影響
この手続きが新制度の「直接のターゲット」となります。滞納により更新が不許可になった場合、深刻なリスクが生じることになります。
具体的には、未納分の納付や自治体からの証明書取得に時間がかかります。そのリカバリー期間中に在留期限が切れてしまうと、オーバーステイ(不法残留)に陥る危険性も否定できません。
就労ビザで在留中の方は、特に注意が必要です。更新が突然不許可になれば、就労の継続自体が困難となる場合があります。
在留資格認定証明書(呼び寄せ)への影響
海外にいる申請者本人への直接的な影響は限定的です。しかし、日本にいる扶養者や雇用主(スポンサー)側への影響は見逃せません。
たとえば、配偶者ビザで家族を呼び寄せるケースを考えてみましょう。日本にいる外国人に国保や年金の未納があれば、「扶養能力なし」と判断される可能性があります。その結果、家族の認定申請が不許可となるケースも想定されます。
さらに、企業が外国人を雇用する場合も同様です。社会保険の未加入や労働保険の滞納があれば、企業の適格性が問われ、不許可リスクが高まる傾向があります。
永住許可申請への影響と取り消し制度
永住許可申請においては、すでに過去2年〜5年間の完璧な納付が求められています。そのため、新制度で審査基準が新しく変わるというよりは、「一般ビザの更新段階でふるい落とされる」ケースが増える可能性があると考えられます。
また、令和9年4月には改正入管法に基づく永住者の在留資格取り消し制度の運用も開始される見込みです。出入国在留管理庁の永住許可制度適正化Q&Aでは、以下のような取り消し事由が示されています。
- 故意に公租公課(税金・社会保険料)の支払をしないこと
- 入管法に規定された義務を正当な理由なく遵守しないこと
- 一定の重大な刑罰法令に違反すること
ただし、病気や失業などやむを得ない事情がある場合は、取り消しの対象外とされています。個別具体的な事情に応じて判断されることも明記されています。
帰化申請への間接的な影響
帰化申請は法務局が管轄するため、今回の入管庁と自治体のシステム連携が直接影響するわけではありません。
とはいえ、間接的な影響は無視できないと言えます。帰化申請中に在留期限が到来し、税金未納を理由に更新が不許可となれば、適法な在留が途切れてしまいます。その結果、帰化申請も自動的に取り下げとなる可能性があります。
したがって、帰化を目指す方は、法務局の審査対策だけでなく、現在のビザ更新を確実に通す状態を維持することが欠かせません。
在留審査の厳格化に対する実務上の対策
ここからは、新制度に向けて今から準備すべき具体的な対策を解説します。外国人ご本人だけでなく、雇用企業にとっても重要な内容です。
受任前スクリーニングの重要性
まず、在留申請を行う前の段階で納付状況を確認することが不可欠です。具体的には、以下の確認作業を行うことをお勧めします。
| 確認項目 | 確認方法 |
|---|---|
| 国民健康保険料の納付状況 | 市区町村窓口で納付証明書を取得 |
| 国民年金保険料の納付状況 | 「ねんきんネット」の画面で確認 |
| 住民税の納付状況 | 市区町村で課税・納税証明書を取得 |
このように事前にスクリーニングを行うことで、申請前にリスクを把握できます。
未納がある場合の具体的な対処法
次に、未納が発覚した場合の対応について説明します。最も重要なのは、督促を放置しないことです。
未納への具体的な対処法は以下のとおりです。
- 即時納付が可能な場合:速やかに全額を納付し、納付証明書を取得する
- 一括納付が困難な場合:市区町村窓口で分納(分割払い)の相談を行う
- 国民年金の支払いが困難な場合:年金の免除申請や猶予申請を速やかに行う
特に、適法な猶予・免除の手続きをとっていれば、「滞納」とは見なされない可能性が高いと考えられます。そのため、放置するのではなく、必ず窓口で相談することが大切です。
雇用企業に求められるコンプライアンス対策
さらに、外国人を雇用する企業側の対応も重要になってきます。従業員のビザ更新が突然不許可になれば、貴重な人材を失うリスクにつながります。
企業としては、以下の対策が求められる傾向があります。
- 入社時のオリエンテーションで社会保険制度を丁寧に説明する
- 住民税の特別徴収(給与天引き)を徹底する
- 社会保険の適用対象者を適切に加入させる
- 定期的に従業員の納付状況を確認し、指導を行う
このように、単なる手続き代行ではなく「予防法務・コンプライアンス指導」の視点が、今後ますます重要になると考えられます。
在留審査の厳格化に備えて今すぐできること
令和9年(2027年)の新制度開始まで、あと1年余りとなりました。まとめると、今回の在留審査の厳格化のポイントは以下のとおりです。
- 令和9年6月から国保・年金の納付情報が在留審査に直接反映される見込み
- マイナンバーを活用したシステム連携で未納の隠蔽は困難になる
- 令和9年4月には永住者の在留資格取り消し制度も開始される見込み
- 督促を放置せず、分納相談や免除申請を行うことが最善の対策
- 外国人本人だけでなく、雇用企業のコンプライアンスも問われる時代へ
なお、在留審査の厳格化に関する最新情報は、出入国在留管理庁の公式サイトや永住許可に関するガイドラインでも確認できます。制度の詳細は今後の運用次第で変わる部分もありますので、最新情報を常にチェックしておくことをお勧めします。
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