外国人の方が日本で働くために在留資格「特定技能1号」を取得する際、日本語能力を証明する試験に合格する必要があります。その際に選択肢となるのが、JLPT(日本語能力試験)とJFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)です。
しかし、「どちらの試験を受ければいいのか」「それぞれどう違うのか」と悩まれる方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、行政書士の立場から、JLPT と JFT-Basic の違いについて詳しく解説いたします。
JLPT と JFT-Basic とは?それぞれの試験の概要

まず、JLPT と JFT-Basic がどのような試験なのか、基本的な情報を確認しておきましょう。また、特定技能ビザとの関係についても触れていきます。
JLPT(日本語能力試験)の概要
JLPTは、国際交流基金と日本国際教育支援協会が共同で実施する、日本語を母語としない方を対象とした日本語能力の測定試験です。1984年に開始され、世界中で広く認知されている日本語試験の一つとなります。
試験はN1からN5までの5つのレベルに分かれており、N1が最も難易度が高く、N5が最も基礎的なレベルです。さらに、読解・聴解・言語知識(文字・語彙・文法)の3つの要素から日本語能力を測定します。
JLPTの詳細については、日本語能力試験(JLPT)公式サイトで確認することができます。
JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)の概要
一方、JFT-Basicは、国際交流基金が2019年4月から実施を開始した、比較的新しい日本語試験です。主として就労のために来日する外国人が、日常生活で遭遇する場面でのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定することを目的としています。
この試験は、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」があるかどうかを判定するものです。また、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)のA2レベルに相当する日本語能力を持っているかを確認します。
JFT-Basicの詳しい情報は、JFT-Basic公式サイトでご覧いただけます。
特定技能ビザとの関係
特定技能1号の在留資格を取得する際、原則として日本語能力を証明する必要があります。その証明方法として、以下のいずれかが認められています。
- JLPTのN4以上に合格すること
- JFT-Basicで判定基準点(200点)以上を取得すること
- 技能実習2号を良好に修了していること
つまり、JLPT と JFT-Basic のいずれかに合格すれば、特定技能ビザ取得の際の日本語要件を満たすことができます。就労ビザの詳細についてはこちらをご覧ください。
JLPT と JFT-Basic の主な違い
それでは、両試験の具体的な違いを見ていきましょう。下記の表で、主要な違いをまとめています。
| 比較項目 | JLPT(日本語能力試験) | JFT-Basic |
|---|---|---|
| 運営団体 | 国際交流基金・日本国際教育支援協会 | 国際交流基金 |
| 開始年 | 1984年 | 2019年 |
| 試験方式 | ペーパーテスト(マークシート方式) | CBT方式(コンピューター) |
| レベル区分 | N1~N5の5段階 | レベル区分なし(A2レベル相当の判定) |
| 実施回数 | 年2回(7月・12月) | ほぼ毎日実施(予約制) |
| 再受験制限 | なし | 45日間の再受験禁止期間あり |
| 結果通知 | 試験実施から約2か月後 | 試験終了直後に画面表示、5営業日以内に正式通知 |
| 受験時間 | レベルにより異なる(約100~170分) | 60分 |
| 出題構成 | 言語知識・読解・聴解 | 文字と語彙・会話と表現・聴解・読解 |
| 特定技能での認定基準 | N4以上 | 200点以上(250点満点) |
試験方式の違い
JLPT はマークシート方式のペーパーテストであるのに対し、JFT-Basic はコンピューターを使用したCBT方式で実施されます。そのため、JFT-Basicでは試験会場のコンピューター画面で問題を確認し、画面上で解答を選択する形式となります。
また、JFT-Basicでは設問が英語で表示され、ボタンをクリックすると現地語(中国語、インドネシア語、ベトナム語など)でも確認できるようになっています。
受験機会と結果通知の違い
この点が、JLPT と JFT-Basic の最も大きな違いと言えるかもしれません。JLPTは年2回(7月と12月)のみの実施となりますが、JFT-Basicはほぼ毎日実施されており、受験者が希望する日時を予約して受験できます。
さらに、結果通知についても大きな違いがあります。JLPTは試験実施から約2か月後に結果が通知されるのに対し、JFT-Basicは試験終了直後に画面上で総合得点と判定結果が表示され、5営業日以内に正式な判定結果通知書が発行されます。
このように、JFT-Basicは受験機会が多く、結果もすぐに分かるため、特定技能ビザの取得を急いでいる方には有利な試験と言えるでしょう。
どちらの試験を選ぶべきか?選択のポイント
では、JLPT と JFT-Basic、どちらを受験すればよいのでしょうか。ここでは、選択する際のポイントをいくつかご紹介します。
特定技能ビザ取得を目的とする場合
特定技能ビザの取得だけを目的とするのであれば、JFT-Basicを選択するメリットが大きいと考えられます。理由としては、以下の点が挙げられます。
- 受験機会が多く、自分の都合に合わせて受験できる
- 試験時間が60分と比較的短い
- 結果がすぐに分かるため、ビザ申請のスケジュールが立てやすい
- 生活場面に特化した実用的な内容である
汎用性を重視する場合
一方で、JLPTは1984年から実施されている歴史ある試験であり、日本国内外で広く認知されています。そのため、以下のような目的がある場合は、JLPTの受験を検討するとよいでしょう。
- 大学や専門学校への進学を考えている
- 日本企業への就職を目指している
- 将来的に他の在留資格への変更を検討している
- 日本語能力を幅広く証明したい
実際に、多くの日本企業や教育機関では、JLPTの合格を採用・入学の条件としているケースが見られます。また、永住許可申請や帰化申請の際にも、JLPTの合格証明書が有利に働くことがあります。
日本語レベルに応じた選択
ご自身の日本語レベルに応じて試験を選ぶことも重要です。JFT-BasicはCEFRのA2レベル(基礎レベル)に相当し、JLPTではN4~N5程度の難易度となります。
すでにある程度の日本語能力がある方であれば、JLPT のN3以上を目指すことで、より高い日本語能力を証明することができるでしょう。
試験対策と学習方法のポイント
JLPT と JFT-Basic では出題形式が異なるため、それぞれに合った対策が必要となります。ここでは、試験対策のポイントをご紹介します。
JFT-Basic の対策ポイント
JFT-Basicは生活場面に特化した試験です。そのため、以下のような対策が効果的と考えられます。
- 日常会話で使う基本的な語彙・表現を重点的に学習する
- スーパーや役所、病院などでのやりとりを想定した練習をする
- 公式サイトのサンプル問題で出題形式に慣れる
- CBT方式に慣れるため、コンピューターでの学習を取り入れる
JFT-Basicの公式サイトでは、サンプル問題が公開されているので、事前に確認しておくことをおすすめします。
JLPT の対策ポイント
JLPTは体系的な日本語能力を測る試験です。したがって、以下のような対策が重要となります。
- 語彙・文法・漢字を体系的に学習する
- 過去問題集を活用して出題傾向を把握する
- 読解問題では長文に慣れる練習をする
- 聴解問題では様々な話題の音声に触れる
また、受験を希望するレベルに合わせた教材を選ぶことも大切です。
特定技能ビザ申請における注意点
特定技能ビザを申請する際、日本語試験の合格は重要な要件の一つですが、それだけで在留資格が許可されるわけではありません。ここでは、申請時の注意点をいくつかご紹介します。
試験以外の要件も確認が必要
特定技能1号の在留資格を取得するためには、日本語能力の証明に加えて、以下の要件を満たす必要があります。
- 特定産業分野の技能試験に合格していること
- 受入れ機関(雇用先)が適切な支援体制を整えていること
- 雇用契約の内容が適切であること
- 在留資格該当性や上陸許可基準に適合していること
これらの要件については、出入国在留管理庁の特定技能制度ページで詳細を確認することができます。
技能実習からの移行の場合
技能実習2号を良好に修了した方は、日本語試験と技能試験が免除される場合があります。ただし、「良好に修了」の判断基準や、移行できる特定産業分野には条件があるため、事前に確認しておくことが重要です。
申請書類の準備
日本語試験の合格証明書は、特定技能ビザ申請時に提出する重要な書類の一つです。JLPTの場合は「日本語能力認定書」、JFT-Basicの場合は「判定結果通知書」を準備する必要があります。
また、これらの証明書は有効期限がないため、過去に取得したものでも使用できますが、最新の証明書を提出することが望ましいとされています。
まとめ:JLPT と JFT-Basic の違いを理解して最適な選択を
今回は、JLPT と JFT-Basic の違いについて、行政書士の視点から詳しく解説いたしました。両試験にはそれぞれ特徴があり、目的や状況に応じて適切な試験を選択することが大切です。
特定技能ビザの取得を急いでいる方や、生活に必要な日本語能力を証明したい方にはJFT-Basicが、より汎用性の高い日本語能力証明を求める方にはJLPTが適していると考えられます。
また、試験に合格することは特定技能ビザ取得の第一歩ですが、その後の申請手続きも複雑です。書類の準備や要件の確認など、不安な点がある場合は、入管業務に詳しい行政書士にご相談されることをおすすめします。
特定技能ビザのご相談は当事務所へ
当事務所では、特定技能ビザをはじめとする入管業務全般のサポートを行っております。日本語試験に関するアドバイスから、申請書類の作成、出入国在留管理庁への申請代行まで、トータルでサポートいたします。
特定技能ビザに関するお悩みやご不明点がございましたら、お気軽にご相談ください。初回相談は無料で承っております。外国人の方の日本での新しい生活を、専門家としてしっかりとサポートさせていただきます。
(登録申請中4月開業予定)