「銀行に行ったら、書類が足りないと言われて出直しになった」——広島・廿日市でご相談をお受けしていると、預貯金の相続でこうした声を本当によく聞きます。不動産と違い、登記は必要ありません。ところが実際には、金融機関ごとに書式が違い、戸籍の束を何度も持ち回ることになります。そこでこの記事では、銀行の相続手続きの流れを5つのステップに分け、必要書類と手間を減らす方法、代行に任せる判断基準までを行政書士が整理します。
銀行の相続手続きの流れは5ステップ
まず、全体像をつかんでおきましょう。広島銀行でも、もみじ銀行でも、ゆうちょ銀行やJA、信用金庫でも、預貯金の相続手続きの流れはほぼ共通しています。
ステップ1|金融機関に死亡を伝える
最初にすることは、取引のある金融機関への連絡です。すると、その口座は原則として凍結されます。つまり、入金も出金も、公共料金やカードの引き落としも止まります。
なお、市区町村へ死亡届を出しても、その情報が自動的に銀行へ伝わるわけではありません。銀行が知るきっかけは、ご遺族からの連絡や新聞のお悔やみ欄です。とはいえ、黙っていれば凍結されないと考えるのは危険でしょう。あとから発覚すると、引き出した分をめぐって相続人同士のトラブルに発展します。
多くの金融機関は、相続専用のフリーダイヤルや相続センターを設けています。だからこそ、支店の窓口へ出向く前に、まず電話で受付方法を確認するほうが確実です。
ステップ2|残高証明書で財産を確定する
次に、相続開始日(死亡日)時点の残高証明書を請求します。この1通で、その金融機関にあった普通預金・定期預金・投資信託・借入金まで一覧で出てきます。しかも全店照会になるため、通帳の見当たらない口座や、家族も知らなかった定期預金が見つかることも珍しくありません。
さらに、相続税の申告が必要になりそうなら、既経過利息計算書もあわせて依頼しておきましょう。
ステップ3|必要書類をそろえる
ここが最も時間のかかる工程です。亡くなった方の戸籍は、出生から死亡まで連続してそろえなければなりません。転籍や婚姻を繰り返した方なら、5通から10通になることもあります。集め方の手順は相続人の調べ方で詳しく解説しています。
ステップ4|相続手続依頼書を提出する
銀行所定の依頼書(相続届)に相続人全員が署名し、実印を押します。そのうえで、戸籍一式・印鑑証明書・通帳・キャッシュカードを添えて提出します。ただし、この書式は金融機関ごとに異なります。よって、A行で通った書き方がB行でもそのまま通るとは限りません。
ステップ5|払戻し・名義変更が実行される
書類に不備がなければ、おおむね2〜3週間で指定の口座へ振り込まれます。もっとも、相続人の人数が多い場合や補正が入った場合には、1か月以上かかることもあります。
銀行の相続手続きが面倒に感じる3つの理由
手続き自体は難しくありません。それなのに多くの方が疲れてしまうのは、次の3点に理由があります。
理由1|金融機関ごとに書式も窓口も違う
相続届の様式、押印欄の数、代表相続人を立てられるかどうか。これらはすべて金融機関ごとの判断で決まります。そのため、取引先が3行あれば、同じ作業を別々のルールで3回繰り返すことになります。
理由2|戸籍の束を銀行の数だけ持ち回る
戸籍の原本は、提出すれば返してもらえます。しかし、返却を待ってから次の銀行へ回すと、1行あたり2〜3週間ずつ順番待ちが発生します。結果として、3行で3か月近くかかる計算です。
理由3|書類には有効期限がある
印鑑証明書は発行から3か月または6か月以内を求められるのが一般的です。したがって、順番待ちをしているうちに期限が切れ、取り直しになるケースが実際に起きています。

預貯金の相続に必要な書類
必要書類は、遺言書の有無で大きく変わります。
| 状況 | 主な必要書類 |
|---|---|
| 遺言書がない | 被相続人の出生から死亡までの戸籍/相続人全員の戸籍/相続人全員の印鑑証明書/遺産分割協議書(作成した場合)/相続手続依頼書(銀行書式)/通帳・カード |
| 公正証書遺言がある | 遺言書の正本または謄本/被相続人の死亡の記載がある戸籍/受遺者または遺言執行者の印鑑証明書/相続手続依頼書/通帳・カード |
| 自筆証書遺言がある | 上記に加えて家庭裁判所の検認済証明書(遺言書保管制度を利用していた場合は遺言書情報証明書) |
ご覧のとおり、有効な遺言書があると必要書類は大きく減ります。反対に遺言書がなければ、相続人全員の協力が前提になります。協議書の書き方は遺産分割協議書の書き方【不動産あり】をご覧ください。
なお、令和6年3月1日から戸籍の広域交付が始まり、本籍地が県外でもお住まいの市区町村でまとめて請求できます(法務省「戸籍法の一部を改正する法律について」)。ただし請求できる人が限られ、郵送や代理人請求には使えません。詳しくは相続の戸籍集めが終わらないで整理しています。
法定相続情報一覧図で銀行の相続手続きは半分になる
複数の金融機関に口座がある方に、ぜひ使っていただきたいのがこの制度です。
法務局へ戸籍一式と相続関係の一覧図を提出すると、認証文の付いた写しを無料で交付してもらえます(法務局「法定相続情報証明制度について」)。この写しは戸籍の束の代わりになります。つまり、必要な枚数を最初にまとめて受け取っておけば、3行へ同時に手続きを出せるわけです。
申出先は、被相続人の本籍地・最後の住所地・申出人の住所地・不動産の所在地のいずれかを管轄する登記所です(具体的な手続)。広島県内の取扱いは8か所で、廿日市市・広島市佐伯区・大竹市にお住まいなら広島法務局廿日市支局が窓口になります(管轄区域一覧)。
口座凍結中に生活費が必要なときの払戻し制度
葬儀費用や当面の生活費が要るのに、口座が動かせない。これは実務でも頻繁に起こります。そこで用意されているのが、遺産分割前の払戻し制度です。
2019年7月1日施行の改正相続法により、遺産分割の前でも相続人が単独で一定額を引き出せるようになりました(法務省「相続法の改正」)。計算式は次のとおりです。
相続開始時の預貯金債権の額 × 3分の1 × その相続人の法定相続分
ただし、同一の金融機関からの払戻しは150万円が上限
たとえば預金1,200万円を残して夫が亡くなり、相続人が妻と子ども2人だとします。妻の計算は1,200万円×1/3×1/2=200万円ですが、上限が効くため実際に引き出せるのは150万円です。一方、子ども1人なら1,200万円×1/3×1/4=100万円となり、こちらは全額を受け取れます(法務省リーフレット)。
この制度を使う場合も、戸籍一式と印鑑証明書は必要です。加えて、引き出した分は遺産を先に受け取ったものとして扱われます。そのため領収書を残し、使途を他の相続人へ説明できるようにしておきましょう。上限を超える額が要るなら、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立て、仮分割の仮処分を求める方法もあります。

広島で預貯金の相続を進めるときの注意点
取引先が複数にまたがりやすい
広島県内では、地元の地方銀行に給与口座、農協に農地関係の口座、ゆうちょ銀行に定期貯金、というように分散しているご家庭が少なくありません。しかも通帳をつくった時期が古いほど、家族が把握していない口座は残りがちです。だからこそ、郵便物・キャッシュカード・確定申告書の控えから取引先を洗い出す作業を最初に行ってください。
10年以上動きのない口座は休眠預金になっている
最後の取引から10年以上が経過した口座は、休眠預金等として預金保険機構へ移管されます(金融庁「長い間、お取引のない預金等はありませんか?」)。とはいえ、権利が消えるわけではありません。移管後も、取引のあった金融機関で引き続き引き出せます(預金保険機構「長い間お取引のない預金」)。ただし相続の場合は所定の手続きが必要で、通常より日数がかかる点は見込んでおきましょう。
相続税の申告期限から逆算する
相続税の申告と納付は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です(国税庁No.4205)。残高証明書は申告にも使います。つまり、銀行の手続きを後回しにすると、税理士へ渡す資料もそろいません。
銀行の相続手続きは代行できる
ここまで読んで「やはり自分では大変だ」と感じた方も多いはずです。実は、預貯金の相続手続きは専門家に任せられます。
行政書士に頼めること・頼めないこと
| 内容 | 担当 |
|---|---|
| 戸籍収集・相続関係説明図・法定相続情報一覧図の申出代理 | 行政書士 |
| 財産目録の作成・残高証明書の取得サポート | 行政書士 |
| 遺産分割協議書の作成 | 行政書士 |
| 不動産の相続登記 | 司法書士 |
| 相続税の申告 | 税理士 |
| 相続人間で争いがある場合の代理交渉 | 弁護士 |
当事務所では戸籍収集から遺産分割協議書の作成までを担当し、金融機関ごとの必要書類の整理と提出書類一式の準備までお手伝いします。そのうえで、登記や税務は連携する司法書士・税理士へおつなぎします。
依頼から完了までの目安
| 段階 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | 面談・取引先の洗い出し・見積り | 初日 |
| 2 | 職務上請求による戸籍収集 | 2〜4週間 |
| 3 | 法定相続情報一覧図の申出・交付 | 1〜2週間 |
| 4 | 財産目録・遺産分割協議書の作成 | 1週間 |
| 5 | 各金融機関へ提出・払戻し | 2〜4週間 |
全体では2〜3か月が目安です。もっとも、書類を同時並行で回せるぶん、ご自身で順番に進めるより短く収まるのが通例です。どこまで自分でやるかの切り分けは、相続手続きは自分でできる?で判断表にまとめています。

よくある質問
Q1.通帳もカードも見つかりません。手続きできますか
できます。取引の有無から確認する照会を各金融機関へ依頼しましょう。その際は、亡くなった方の死亡の記載がある戸籍と、請求する相続人の本人確認書類を用意してください。
Q2.相続人が1人だけでも同じ手続きが必要ですか
必要です。ただし遺産分割協議書は要りません。そのかわり、ほかに相続人がいないことを示すため、出生から死亡までの戸籍をそろえる点は変わりません。
Q3.凍結される前に引き出しておいてもよいですか
おすすめしません。相続財産を処分したとみられると、単純承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。生活費が必要なら、前述の払戻し制度を使ってください。
Q4.相続人の1人が認知症です。どうなりますか
判断能力を失った方がいる場合、遺産分割協議はそのままでは成立しません。家庭裁判所へ成年後見人の選任を申し立てる必要があり、期間は一気に延びます。詳しくは親が認知症で相続手続きができないをご覧ください。
まとめ|先に一覧図、それから銀行へ
預貯金の相続で時間を食うのは、窓口での手続きそのものではありません。戸籍を集め、それを金融機関の数だけ回す部分です。だからこそ、先に法定相続情報一覧図を取り、必要枚数をそろえてから各行へ同時に出す。この順番にするだけで、期間は目に見えて短くなります。
とはいえ、平日に何度も窓口へ行けない方、取引先が多い方には負担が残ります。全体像がつかめない段階でも構いませんので、まずはお気軽にご相談ください。広島・廿日市の行政書士として、取引先の洗い出しから提出書類の準備まで、窓口ひとつでお手伝いします。
▶ 相続・遺言の専門サイトはこちら:https://hiroshima-sozoku.biz
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行政書士江島世鉉事務所(広島県行政書士会 広島西支部/登録番号 26341147)
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