「私が死んだら、この家と預金はどうなるのでしょうか」——配偶者も子もいない、いわゆるおひとりさまの方から、広島でこうしたご相談を受ける機会が増えました。相続人がいない財産は、親しくしてくれた人へ自動的に渡るわけではありません。しかも手続きを動かす人がいないため、家庭裁判所が関わる長い手続きになります。そこでこの記事では、相続人がいないと何が起こるのかを整理したうえで、広島・廿日市で今すぐ始められるおひとりさまの相続対策を、行政書士の視点で解説します。
おひとりさまで相続人がいないと何が起こるのか
まず確認したいのは「本当に相続人がいないか」
法律上の相続人は、配偶者と血族相続人だけです。血族相続人には順位があり、第1順位が子、第2順位が父母などの直系尊属、第3順位が兄弟姉妹と続きます。なお、兄弟姉妹が先に亡くなっていれば甥姪が代わりに相続しますが、甥姪の子までは相続権が及びません。したがって「身寄りがない」と感じていても、疎遠な兄弟姉妹や甥姪が法律上は相続人として残っているケースがあります。まずは戸籍で確認しておきましょう(詳しくは相続人の調べ方をご覧ください)。
相続人がいない財産は、最終的に国庫へ入る
相続人のあることが明らかでないとき、その財産は「相続財産法人」として扱われます。そして家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、清算人が債権者や受遺者へ支払いを済ませます。最後に残った財産は、民法959条により国庫へ帰属します。ここで見落とされがちなのが、長年支えてくれた内縁のパートナーや友人の立場です。こうした方々は、遺言がなければ1円も受け取れません。
相続財産清算人の手続きには半年以上かかる
相続財産清算人の選任を申し立てられるのは、債権者などの利害関係人か検察官で、申立先は亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所です。費用は収入印紙800円と連絡用の郵便切手、官報公告料5,582円がかかります。さらに、財産が少ないときは清算人の報酬などに充てる予納金を求められることもあります。なお、令和5年4月1日施行の改正民法で公告手続きが整理され、権利関係の確定に最低10か月かかっていた期間は最低6か月へ短縮されました。とはいえ、選任から国庫への帰属まで1年前後を要するのが実情です。
お世話になった人が受け取るには家裁への申立てが必要
相続人が現れなかった場合、特別縁故者として家庭裁判所へ財産分与を申し立てる道が残されています。対象は、亡くなった方と生計を同じくしていた人、療養看護に努めた人、その他特別の縁故があった人です。ただし、申立期間は相続人捜索の公告期間が満了してから3か月以内と短く、しかも家庭裁判所が相当と認めたときに限られます。認められる保証はどこにもありません。だからこそ、元気なうちに意思を書面にしておく価値があります。

相続人がいない場合に広島で今すべき準備は4つ
おひとりさまの相続対策は、「財産をどう渡すか」と「死後の手続きを誰がやるか」に分けると整理できます。以下の4つの組み合わせが実務の基本形です。
| 準備すること | 何のために使うか | 作り方 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
| 遺言書+遺言執行者 | 死後に財産を渡す相手を決める | 公正証書、または自筆+法務局保管 | 公証人手数料、保管は1通3,900円 |
| 死後事務委任契約 | 葬儀・納骨・解約など死後の手続き | 公正証書が一般的 | 報酬+実費の預託 |
| 任意後見契約 | 判断能力が下がった後の生活と財産管理 | 公正証書(必須) | 公証人手数料+後見人等の報酬 |
| 見守り・財産管理委任契約 | 元気なうちから任意後見発効までの空白を埋める | 私署証書または公正証書 | 月額の見守り報酬など |
①遺言書と遺言執行者の指定
財産の行き先を自分で決められる唯一の方法が遺言書です。友人、甥姪、内縁のパートナー、お世話になった施設や団体への寄付も指定できます。加えて、おひとりさまの場合は遺言執行者を必ず決めておいてください。相続人がいなければ、遺言があっても手続きを実際に動かす人がいないからです。遺言執行者を指定しておけば、預貯金の解約や不動産の名義変更を単独で進められます。専門家を選んでおくと、より確実です。
②死後事務委任契約
葬儀や火葬、納骨、病院・施設の精算、賃貸住宅の明渡し、電気やガス・携帯電話の解約、年金や健康保険の届出、遺品整理——こうした事務は、遺言書に書いてもそのままでは実行されません。というのも、遺言で法的な効力が生じる事項は法律で定められており、死後の事務手続きはそこに含まれないからです。そこで結んでおくのが死後事務委任契約です。委任契約は本来、委任者の死亡によって終了します(民法653条)。もっとも、死後の事務を委ねる合意は実務上有効と解されており、公正証書で作成しておくのが一般的です。あわせて、費用の預け方まで決めておくと安心です。
③任意後見契約と見守り契約
判断能力が下がってからでは、遺言も契約もできません。任意後見契約は公正証書で結び、判断能力の低下後に家庭裁判所が任意後見監督人を選任して効力が生じます。ところが、おひとりさまには「そろそろ発効の時期だ」と気づいてくれる家族がいません。そのため、見守り契約や財産管理委任契約をセットにする方法が選ばれています。口座が凍結される仕組みは、認知症の口座凍結対策をご覧ください。
④財産目録とエンディングノート
どこに何があるか分からなければ、遺言執行者も受任者も動けません。通帳、保険証券、不動産の権利証、ネット銀行やネット証券、月額のサブスクリプションまで一覧にしておきましょう。さらに、保管場所を信頼できる人へ伝えておきましょう。書き方に迷ったら、エンディングノートの書き方も参考になります。

おひとりさまの遺言書は公正証書が確実
広島の公証役場と費用の目安
公正証書遺言は公証人が関与するため、形式の不備で無効になるおそれが小さく、家庭裁判所の検認も不要です。手数料は財産の価額で決まり、たとえば1,000万円超3,000万円以下なら26,000円、これに遺言加算13,000円(遺言の目的の価額が1億円以下のとき)が加わります。また、証人2人の立会いが必要で、推定相続人や受遺者、その配偶者や直系血族は証人になれません(民法974条)。身内に頼みにくいときは、専門家に証人の手配ごと任せられます。県内の公証役場は6か所あり、廿日市市からの最寄りは広島公証人合同役場(広島市中区中町7-41/082-247-7277)です。詳しい内訳は公正証書遺言の費用はいくら?にまとめています。
自筆で書くなら保管制度の「指定者通知」を使う
自筆証書遺言は、法務局に預けることができます。手数料は1通3,900円で、検認も不要になります。とりわけおひとりさまに役立つのが指定者通知です。遺言者が亡くなったことを法務局が把握したとき、あらかじめ指定しておいた最大3名へ、遺言書が保管されている旨の通知が届きます。ただし、指定できるのは推定相続人や受遺者、遺言執行者などに限られます。書き方の注意点は自筆証書遺言の正しい書き方をご確認ください。なお、遺言書の保管申請は広島法務局廿日市支局(廿日市市新宮1-15-40)でも受け付けています。
身元保証・終活サポートを頼む前に確認すること
入院や施設入所の身元保証から日常生活の支援、死後事務までをまとめて請け負う事業者が増えています。一方で、契約内容や預けたお金の扱いをめぐるトラブルも指摘されてきました。そこで国は令和6年6月、内閣官房や法務省など関係府省庁の連名で高齢者等終身サポート事業者ガイドラインを策定しました。契約書の作成と交付、サービス内容や費用・解約時の返金ルールの明示、預託金を信託などで保全することが求められています。契約前には、書面が交付されるか、預けたお金がどう管理されるか、解約の条件はどうかを必ず確かめてください。
廿日市市・広島の相談窓口
介護や見守りなど暮らしの困りごとは、廿日市市の地域包括支援センターが総合相談の窓口です。市内には5か所あり、阿品や地御前の地域は「はつかいち西部」(0829-30-9066)が担当します。権利擁護や認知症の相談にも応じてもらえます。一方、遺言や死後事務のように書面で残す準備は、行政書士などの専門家が窓口になります。
よくある質問
疎遠な兄弟姉妹や甥姪がいます。それでも遺言は必要ですか
必要です。兄弟姉妹や甥姪には遺留分がありません。ですから遺言の内容がそのまま実現しやすく、対策の効果が出やすいケースといえます。
お墓や納骨の希望を遺言書に書けば実行されますか
遺言に書いた希望は、法的な強制力のない「付言事項」にとどまります。確実に実行してほしいのであれば、死後事務委任契約で受任者に委ねてください。
財産をすべて寄付したいのですが可能ですか
遺贈という形で可能です。ただし、団体や自治体によっては不動産や現物を受け取れないことがあります。事前に受入れの可否を確認し、換価してから寄付する方法も含めて遺言執行者と決めておきましょう。
準備はいつから始めればよいですか
判断能力があるうちにしか始められません。したがって、「まだ元気なうち」が唯一のタイミングです。
まとめ|相続人がいないからこそ、生前の一手が効く
相続人がいない財産は、何もしなければ家庭裁判所の手続きを経て国庫へ入ります。お世話になった方が受け取るにも、短い期限の申立てが要ります。だからこそ、遺言書・死後事務委任契約・任意後見契約・財産目録という4つの準備が、おひとりさまの安心を支えます。
行政書士江島世鉉事務所では、広島県廿日市市を中心に、遺言書の作成サポートから死後事務委任契約、財産目録の整理までお手伝いしています。何から手をつけるべきか迷っている方も、まずはお気軽にご相談ください。
▶ 相続・遺言の専門サイトはこちら:https://hiroshima-sozoku.biz
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行政書士江島世鉉事務所(広島県行政書士会 広島西支部/登録番号 26341147)
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裁判所「相続財産清算人の選任」|裁判所「特別縁故者に対する相続財産分与」|法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目」|法務省「遺言書保管制度の通知」|高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)|廿日市市「地域包括支援センター」