令和7年(2025年)10月1日から、古物営業法施行規則の一部改正が施行されました。この古物営業法改正により、特定の金属製品を買い受ける際の本人確認義務が強化される傾向があります。本記事では、古物商許可を取得されている事業者様や、これから古物商として事業を始められる方に向けて、今回の改正内容とその背景を詳しく解説いたします。
古物営業法改正の背景:急増する金属盗難被害

今回の古物営業法施行規則の改正は、近年深刻化している金属盗難被害への対策として行われました。特に、太陽光発電施設からの銅線ケーブルの盗難や、マンホール、グレーチング(側溝のフタ)などの金属製品の盗難が増加している傾向があります。
金属盗難の現状
警察庁の統計によると、金属盗の認知件数は以下のように推移しています。
| 年次 | 認知件数 |
|---|---|
| 令和2年 | 約6,500件 |
| 令和3年 | 約8,000件 |
| 令和4年 | 約12,000件 |
| 令和5年 | 約16,300件 |
| 令和6年(速報値) | 約20,700件 |
このように、令和2年以降、金属盗の認知件数は急増する傾向があります。特に注目すべきは、令和5年の被害総額が約132億8,700万円に上り、窃盗犯全体の被害額の約2割を占めている点です。
銅価格の高騰と盗難被害の関係
金属盗難が増加している背景には、銅をはじめとする金属価格の高騰があります。カーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギーや電気自動車に不可欠な銅の需要が高まっており、今後も高額での取引が続く可能性が高いと考えられます。
さらに、盗まれた金属製品が金属くず買受け業者に持ち込まれ、売却されるケースが確認されており、盗品の流通を防止する必要性が高まっていました。
古物営業法改正の具体的な内容
それでは、令和7年10月1日に施行された古物営業法施行規則の改正について、具体的な内容を見ていきましょう。
1万円未満でも本人確認が必要な物品の追加
古物商は、原則として買い受ける物品の総額が1万円未満の場合、相手方の確認義務及び帳簿等への記載義務が免除される傾向があります。しかし、一部の物品については、取引金額に関わらず、これらの義務が課される仕組みとなっています。
今回の改正により、以下の4品目が「1万円未満でも本人確認が必要な物品」に追加されました。
追加された対象物品の詳細
(1)エアコンディショナーの室外ユニット
いわゆる室外機のことです。エアコンの室外機には銅管などの金属部品が含まれており、盗難のターゲットになりやすい傾向があります。また、住宅や店舗の外に設置されているため、比較的容易に盗まれる可能性があります。
(2)電気温水機器のヒートポンプ
電気温水機器のヒートポンプは、室外機と形状が非常に似ているため、本人確認義務等の対象となりました。これも銅などの金属部品を含むため、盗難被害が懸念される品目です。
(3)電線
電線については素材が問われませんが、LANケーブル、テレビ接続ケーブル、家庭用の延長コード、充電ケーブルなどは対象外となります。つまり、主に電気工事などで使用される太い電線が規制の対象となる傾向があります。
太陽光発電施設からの銅線ケーブルの盗難が急増しており、令和5年だけで5,361件もの認知件数が報告されています。
(4)グレーチング(金属製のものに限る)
グレーチングとは、主として側溝のフタなどに用いられる格子状のものを指します。金属製のものに限られているため、コンクリート製のものは対象外となります。マンホールの蓋などと同様、公共の場所から盗まれるケースが増えています。
古物商に求められる具体的な対応
今回の古物営業法改正を受けて、古物商の皆様には以下の対応が求められます。
本人確認の徹底
上記4品目を買い受ける際には、取引金額に関わらず、必ず相手方の本人確認を行う必要があります。本人確認の方法としては、以下のような方法が考えられます。
- 運転免許証の提示
- マイナンバーカードの提示
- パスポートの提示
- 健康保険証と補完書類の組み合わせ
特に、顔写真付きの本人確認書類の提示を受けることが推奨される傾向があります。
帳簿等への記載義務
本人確認と併せて、帳簿等への記載も必要となります。記載事項としては、以下のような項目が求められる傾向があります。
- 取引の年月日
- 古物の品目及び数量
- 相手方の住所、氏名、職業、年齢
- 相手方の確認のために提示を受けた書類の名称等
疑わしい取引への対応
もし、相手方が本人確認を拒否したり、提示された身分証明書に不審な点がある場合は、取引を控えることが望ましいと考えられます。また、大量の電線や室外機を個人が持ち込んでくるような不審なケースについては、特に注意が必要です。
盗品の疑いがある場合は、最寄りの警察署に相談されることをお勧めいたします。
古物商許可を取得する際の注意点
これから古物商許可を取得される方は、今回の改正内容を踏まえた上で、適切な営業体制を整える必要があります。
営業所の管理体制
古物商として営業する場合、営業所ごとに管理者を配置する必要があります。管理者は、古物営業法の規定を遵守し、従業員に対して適切な指導を行う責任を負います。
特に、本人確認義務が強化された品目については、従業員全員が改正内容を理解し、確実に実施できるよう教育することが重要です。
帳簿等の適切な管理
古物台帳や本人確認書類のコピーなどは、3年間保存する義務があります。これらの書類を適切に管理・保管できる体制を整えておく必要があります。
また、今後は電子帳簿への移行も進んでいく可能性が高いため、電子的な本人確認方法(eKYC)なども視野に入れておくとよいでしょう。
違反した場合の罰則
古物営業法に違反した場合、以下のような罰則が科される可能性があります。
本人確認義務違反
相手方の本人確認を怠った場合、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処される可能性があります(古物営業法第31条)。
帳簿への記載義務違反
帳簿への記載を怠ったり、虚偽の記載をした場合も、同様に6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処される可能性があります。
許可の取消し
古物営業法に違反した場合、公安委員会から指示や営業停止命令を受ける可能性があります。さらに、これらの命令に従わなかったり、重大な違反を繰り返したりした場合は、許可の取消しという最も重い処分を受けることもあり得ます。
許可が取り消されると、古物商としての営業ができなくなるだけでなく、一定期間、再度の許可申請ができなくなる可能性もあります。
今後の古物営業法の動向
今回の古物営業法施行規則の改正は、金属盗難対策の一環として行われましたが、今後もさらなる法改正が行われる可能性があります。
銅くず買取業者への規制強化
警察庁の「金属盗対策に関する検討会」の報告書では、古物に該当しない金属くずの買受けについても、法律による規制が必要であるとの方向性が示されています。
具体的には、金属くず買受け業者に対しても、古物商と同様の本人確認義務や帳簿記載義務を課す方向で検討が進められています。また、盗品である疑いがある場合の申告義務や、無許可営業に対する罰則なども議論されています。
規制対象金属の拡大
現在は銅を中心とした規制となっていますが、今後、アルミなど他の金属についても、価格の変動や盗難被害の状況に応じて、規制対象に追加される可能性があります。
カーボンニュートラルの実現に向けて、アルミの需要も高まることが見込まれており、それに伴って盗難被害が増加すれば、規制が強化される方向に進む可能性が高いと考えられます。
行政書士に相談するメリット
古物商許可の申請や、古物営業法の遵守については、専門的な知識が必要となる場合があります。特に、今回のような法改正があった場合、どのように対応すればよいか分からないという事業者様も多いのではないでしょうか。
許可申請手続きのサポート
古物商許可の申請には、様々な書類の準備が必要です。営業所の使用権限を証明する書類、管理者の住民票、誓約書など、不備があると申請が受理されない可能性もあります。
行政書士に依頼すれば、必要書類の準備から申請書の作成、警察署への提出まで、一貫してサポートを受けることができます。
法令遵守体制の構築支援
古物営業を適切に行うためには、古物営業法だけでなく、犯罪収益移転防止法など、関連する法令についても理解しておく必要があります。
行政書士は、これらの法令に精通しており、事業者様の実情に合わせた法令遵守体制の構築をサポートすることができます。
法改正への迅速な対応
今回のような法改正があった際、その内容を正確に理解し、必要な対応を行うことは、事業者様にとって負担となる可能性があります。
行政書士に顧問契約などでサポートを依頼しておけば、法改正の情報をタイムリーに提供し、必要な対応についてアドバイスを受けることができます。
まとめ:古物営業法改正への適切な対応を
令和7年(2025年)10月1日に施行された古物営業法施行規則の改正により、エアコンの室外機、電気温水機器のヒートポンプ、電線、グレーチング(金属製)の4品目について、取引金額に関わらず本人確認と帳簿記載が義務化されました。
この改正は、急増している金属盗難被害への対策として行われたものであり、古物商の皆様には、改正内容を正確に理解し、適切に対応することが求められます。
しかし、本人確認を怠ったり、帳簿への記載を怠ったりした場合、罰則が科される可能性があります。また、今後もさらなる法改正が行われる可能性もあり、常に最新の情報をキャッチアップしていく必要があります。
古物商許可の取得や、古物営業法の遵守にお悩みの事業者様は、ぜひ専門家である行政書士にご相談ください。皆様の事業が適法かつ円滑に運営されるよう、全力でサポートいたします。(登録申請中4月開業予定)