「相続手続きは、自分でできるのだろうか」——広島・廿日市でご相談をお受けするとき、最初に出てくるのがこの疑問です。結論からいえば、条件さえそろえばご自身で進められます。しかし、途中まで進めてから行き詰まる方も少なくありません。そこでこの記事では、相続手続きを自分でできるかどうかを見極める基準と、多くの方がぶつかる「自力の限界」を、広島の行政書士が整理してお伝えします。

相続手続きは自分でできる?判断の分かれ目

まず押さえていただきたいのは、相続手続きが「ひとつの手続き」ではないという点です。実際には、戸籍集め・財産調査・遺産分割協議・名義変更・税の申告といった作業の集合体になります。したがって、「全部を自分でやるか、すべて頼むか」という二択で考える必要はありません。むしろ「どこまで自分でやるか」と考えたほうが、判断はぐっと楽になります。

自分で進めやすいケースと、頼んだほうが安全なケース

判断の目安を、次の表に整理しました。

項目自分で進めやすい専門家に頼むほうが安全
相続人配偶者と子どもだけで、全員と連絡が取れる兄弟姉妹や甥姪が相続人/疎遠・音信不通・認知症の方がいる
財産預貯金が中心で、口座も把握できている不動産が複数ある/他県に土地がある/借金の有無が不明
遺言書公正証書遺言があり、内容も明確遺言書がない/自筆で有効性に不安がある
税金基礎控除以下で、相続税の申告が不要相続税の申告が必要/特例を使いたい
時間平日の日中に窓口へ行ける平日は仕事で動けない/遠方に住んでいる

左の列にすべて当てはまるなら、ご自身で進めても大きな支障は出にくいでしょう。反対に、右の列がひとつでも当てはまる場合は、その部分だけでも専門家を挟むほうが、結果的に早く終わります。

なお、手続きの順番そのものに迷っているなら、相続手続きは何から始める?もあわせてご覧ください。

相続を行政書士に相談するイメージ写真

自分でやるなら必ず押さえたい4つの期限

相続手続きが自力で難しくなる最大の理由は、期限があることです。しかも、過ぎてしまうと取り返しがつかないものも含まれます。

手続き期限
相続放棄・限定承認相続の開始を知った時から3か月以内
準確定申告(故人の所得税)相続の開始を知った日の翌日から4か月以内
相続税の申告・納付相続の開始を知った日の翌日から10か月以内
相続登記(不動産の名義変更)取得を知った日から3年以内

たとえば相続放棄は、期限を過ぎると原則として認められません(裁判所「相続の放棄の申述」)。また、故人に事業所得や不動産所得があった場合には、準確定申告が必要です(国税庁No.2022)。相続税の申告期限も10か月と短く(国税庁No.4205)、話し合いがまとまらないまま期限を迎える例は珍しくありません。

加えて、相続登記は令和6年4月1日から義務化されました。取得を知った日から3年以内に申請せず、正当な理由もない場合は、10万円以下の過料の対象になります(法務省「相続登記の申請義務化について」)。しかも、施行日より前に相続した未登記の不動産についても、令和9年3月31日までに登記しなければなりません。

自力の限界①:戸籍集めは広域交付でも終わらない

相続手続きを自分でやると決めた方が、最初につまずくのが戸籍集めです。相続人を確定するには、故人の出生から死亡までの戸籍をすべてそろえる必要があります。

広域交付でできること

令和6年3月1日から、戸籍の「広域交付」が始まりました。この制度により、本籍地が遠方でも、お住まいの市区町村の窓口でまとめて請求できます(法務省「戸籍法の一部を改正する法律について」)。廿日市にお住まいで本籍が県外という方には、大きな前進といえるでしょう。

広域交付でも残る3つの壁

ところが、便利になった制度にも制約があります。

  • 請求できるのは本人・配偶者・直系尊属(父母や祖父母)・直系卑属(子や孫)に限られます。したがって、兄弟姉妹や甥姪が相続人になるケースでは使えません。
  • 窓口に本人が出向く必要があり、郵送や代理人による請求はできません。つまり、平日に休めない方には依然としてハードルが残ります。
  • コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は対象外です。そのため、古い手書きの除籍は本籍地へ個別に請求することになります。

戸籍の読み解き方や集める順番については、相続人の調べ方で詳しく解説しています。

自力の限界②:書類は「作り直し」が起きやすい

自分で集めた書類が窓口で通らず、二度手間になる——これも自力で進めるときによくある落とし穴です。

遺産分割協議書は形式が命

遺産分割協議書は、相続人全員が参加し、全員が実印を押し、印鑑証明書を添えて初めて効力を持ちます。ただし、それだけでは足りません。不動産は登記事項証明書のとおりに、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号まで正確に記載する必要があります。表記があいまいだと、法務局や銀行で受け付けてもらえないおそれがあるのです。書き方の詳細は、遺産分割協議書の書き方【不動産あり】をご覧ください。

法定相続情報一覧図で手間を減らす

一方、書類の束を何度も持ち回る負担は、工夫次第で減らせます。法務局の法定相続情報証明制度を使えば、戸籍一式の代わりに一覧図の写しを各窓口へ提出できます。銀行が複数ある場合ほど、この制度は効果を発揮します。

自力の限界③:相続人がそろわない・平日に動けない

書類の問題は努力で乗り越えられます。しかし、人の問題は努力だけでは解決しません。

たとえば、相続人のひとりが認知症で判断能力を失っている場合、遺産分割協議は成立しません。家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てる必要があり、手続きは一気に長期化します(→親が認知症で相続手続きができない)。また、連絡が取れない相続人がいる場合も、勝手に外して協議を進めることはできません。

さらに現実的な壁が、時間です。法務局も市役所も税務署も、平日の日中しか開いていません。県外にお住まいで実家が広島にある方は、往復の交通費と休暇を何度も使うことになります(→遠方の実家の相続)。

どこまで行政書士に頼める?士業の役割分担

「頼む=丸投げ」ではありません。実は、部分的に依頼するほうが費用も時間も抑えられます。

業務担当する専門家
戸籍収集・相続関係説明図・財産目録・遺産分割協議書の作成行政書士
不動産の相続登記司法書士
相続税の申告・税額計算税理士
相続人間の争いの代理交渉・調停弁護士

当事務所では戸籍収集から遺産分割協議書の作成までを担当し、登記や税務は連携する司法書士・税理士へおつなぎします。だからこそ「窓口はひとつ」で進められます。

広島・廿日市で自分で手続きを進めるときの窓口

ご自身で動く場合の主な窓口も、あらかじめ確認しておきましょう。

  • 戸籍・住民票の取得:お住まいの市区町村(廿日市市役所など)
  • 相続登記の申請:不動産の所在地を管轄する法務局
  • 相続税の申告:故人の住所地を管轄する税務署
  • 相続放棄の申述:故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所

いずれも管轄が決まっているため、出向く前に電話で確認しておくと安心です。

よくある質問

Q1.自分でやると、どれくらい時間がかかりますか?

預貯金だけの単純な相続でも、戸籍集めから名義変更まで2〜3か月はみておきましょう。もっとも、転籍が多い方や相続人が多い場合は、半年以上かかることもあります。

Q2.相続税がかかるかどうかは自分で判断できますか?

基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します(国税庁No.4152)。財産の合計がこれを明らかに下回るなら申告は不要です。ただし、不動産の評価や特例の適用は判断が難しいため、微妙なラインなら税理士に確認してください。

Q3.途中まで自分でやってから頼んでも大丈夫ですか?

もちろん問題ありません。実際に、集めた戸籍を持参され「足りない分だけ集めてほしい」というご依頼も多くいただきます。早めにご相談いただくほど、費用も期間も抑えられます。

まとめ:判断軸は「相続人・財産・時間」

相続手続きを自分でできるかどうかは、相続人の顔ぶれ・財産の内容・動ける時間の3つでほぼ決まります。すべてがシンプルなら、ご自身で十分に進められるでしょう。逆に、ひとつでも複雑な要素があるなら、その部分だけを専門家に任せるのが賢明です。

判断に迷ったら、まずはお気軽にご相談ください。広島・廿日市の行政書士として、「どこまで自分でできて、どこから頼むべきか」の切り分けからお手伝いします。

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