登録支援機関の書類作成について、行政書士法19条との関係で悩んでいませんか。特定技能制度の運用において、登録支援機関が在留申請書類を作成する行為は、原則として強い注意が必要です。本記事では、令和8年1月1日に施行された改正行政書士法を踏まえ、「支援業務」と「書類作成業務」の境界を専門家の視点で解説します。
登録支援機関の書類作成と行政書士法19条の関係

まず押さえておくべき結論からお伝えします。登録支援機関ができる中心業務は、特定技能外国人への生活支援および義務的支援です。一方で、入管に提出する申請書類の作成は、行政書士の独占業務にあたります。
そのため、登録支援機関の職員が報酬を得て申請書類を作成することは、原則として認められていません。この点を誤解したまま運用を続けると、行政書士法違反のリスクを抱えることになります。
つまり、「支援」と「書類作成」を明確に分けて考える必要があるのです。以下、それぞれの業務範囲を詳しく見ていきましょう。
登録支援機関が担う支援業務の範囲
登録支援機関は、出入国在留管理庁長官の登録を受けた機関です。特定技能1号外国人の受入れ機関から委託を受け、支援業務を実施します。
登録支援機関の義務的支援10項目
具体的には、以下の支援業務が登録支援機関の中心的な役割となります。
- 事前ガイダンスの実施
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーションの実施
- 公的手続等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(人員整理等の場合)
- 定期的な面談・行政機関への通報
これらはいずれも、外国人の生活や就労を支える業務です。しかし、入管への申請書類を作成する行為は、この支援業務には含まれていません。
行政書士法19条の改正内容と独占業務
行政書士法は令和7年(2025年)6月13日に改正法が公布されました。改正法は令和8年(2026年)1月1日から施行されています。この改正により、申請書類の作成に関するルールが大きく明確化されました。
改正の背景にあった無資格代理問題
改正の背景には、コロナ禍で表面化した無資格者による代理申請問題があります。日本行政書士会連合会の会長談話によれば、無資格者が持続化給付金等の代理申請を行い、多額の報酬を得ていた事例が多数発生しました。
そのため、「コンサル料」「サポート料」などの名目で実質的に書類作成費を受け取る脱法行為を防ぐ目的で、19条が改正されたのです。
改正後の行政書士法19条のポイント
改正後の行政書士法19条は、「他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」官公署提出書類の作成を業として行うことを禁じています。つまり、対価の名目が何であっても、実質的に書類作成の報酬と評価されれば違反となるのです。
具体的には、以下のような名目でも問題となる可能性があります。
- 書類作成費
- 支援委託料
- コンサルタント料
- 事務手数料
- 会費・顧問料
つまり、形式的に「無料」と表示していても、関連する役務の対価として実質的に書類作成料が含まれていると判断されれば、行政書士法違反となるリスクがあります。
行政書士の独占業務の範囲
行政書士の独占業務は、次の3つに整理されます。
| 独占業務の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 官公署提出書類の作成 | 在留資格認定証明書交付申請書、在留資格変更許可申請書等 |
| 権利義務に関する書類の作成 | 契約書、遺産分割協議書等 |
| 事実証明に関する書類の作成 | 履歴書、各種証明書等 |
特定技能の在留申請書類は、明らかに「官公署提出書類」に該当します。したがって、報酬を得て作成できるのは、行政書士または弁護士に限られるのです。
登録支援機関ができる「申請取次」とは
では、登録支援機関の職員は入管に関する業務を一切できないのでしょうか。実は、一定の範囲で「申請取次」という行為が認められています。
申請取次と書類作成の決定的な違い
申請取次とは、すでに作成された申請書類を入管に提出する行為のことです。書類を「作る」ことと、書類を「持っていく」ことは、法律上まったく別の行為として扱われます。
登録支援機関の職員が申請取次を行うためには、地方出入国在留管理局長の事前承認が必要です。また、取次の対象も限定されています。
取次が認められる範囲
- 在留資格「特定技能1号」で受け入れている外国人に関する申請
- これから特定技能1号で受け入れようとする外国人に関する申請
- 当該登録支援機関が支援業務を委託されている外国人に関する申請
- 上記の外国人の配偶者および子に関する申請
したがって、登録支援機関の職員ができるのは、あくまで「提出代行」としての取次です。書類作成そのものを業として行うことはできません。
登録支援機関の書類作成が違法となるケース
実務上、登録支援機関の書類作成が問題となる典型的なケースを整理します。これらに該当する場合、行政書士法19条違反のリスクが高まります。
違法リスクの高い具体例
| パターン | 違法リスク |
|---|---|
| 支援委託料の中に書類作成費用が含まれている | 高 |
| 「書類作成は無料」と謳いつつコンサル料を徴収 | 高 |
| 受入れ企業から委任状を取り、職員が書類を作成 | 高 |
| 月額顧問料の中で書類作成も対応 | 高 |
| 純粋に支援業務のみを実施し、書類は行政書士に依頼 | なし |
特に注意したいのは、委任状を盾にしたケースです。委任状があっても、無資格者が申請書の内容を判断し作成する行為は、独占業務への侵害となります。
違反した場合の罰則と両罰規定
改正行政書士法では罰則も強化されました。違反した場合、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が科されます。なお、刑法改正により令和7年6月1日に懲役と禁錮が一元化され「拘禁刑」が創設されました。行政書士法も令和8年1月1日施行の改正で「懲役」から「拘禁刑」へ表記が改められています。
さらに、今回の改正で見逃せないのが両罰規定の新設です。改正法23条の3により、違反行為を行った個人だけでなく、その所属法人にも100万円以下の罰金が科されることになりました。
登録支援機関は法人形態で運営されているケースが大半です。そのため、職員が違法な書類作成を行った場合、職員個人だけでなく、登録支援機関そのものが処罰対象となります。当然、登録支援機関としての登録取消しリスクも視野に入れる必要があります。
登録支援機関が適法に運営するための実務対応
では、登録支援機関は具体的にどのように業務を整理すればよいのでしょうか。実務上推奨される対応をご紹介します。
適法運営のための業務フロー
- 支援業務と書類作成業務を明確に分離する
- 書類作成は行政書士に外部委託する
- 契約書・請求書で支援委託料と書類作成費を区分する
- 申請取次は承認を受けた職員のみが行う
- 受入れ企業に対し、業務範囲を明示する
また、行政書士と業務提携を結ぶことで、ワンストップでサービスを提供することも可能です。この場合、それぞれの業務の対価を明確に区分することが重要となります。
受入れ企業側の注意点
特定技能外国人を受け入れる企業側にも注意が必要です。登録支援機関に「書類作成も含めて一括で」と依頼するケースが見受けられます。しかし、これは登録支援機関を違法行為に巻き込むことになりかねません。
つまり、受入れ企業は支援業務と書類作成業務を別の専門家に依頼するか、行政書士資格を持つ登録支援機関に依頼する必要があります。
行政書士に書類作成を依頼するメリット
特定技能の在留申請書類の作成を行政書士に依頼することには、複数のメリットがあります。
- 行政書士法に適合した適法な業務遂行
- 入管法に精通した専門家による正確な書類作成
- 不許可リスクの低減
- 登録支援機関の本来業務(生活支援)への集中
- 受入れ企業と登録支援機関の法的リスク回避
具体的には、申請内容に応じた立証資料の選定、理由書の作成、追加資料への対応など、行政書士ならではのノウハウを活用できます。なお、特定技能制度に関する詳細は、出入国在留管理庁の公式情報もあわせてご確認ください。
まとめ|登録支援機関と書類作成の正しい線引き
以上のことから、登録支援機関の書類作成については、次のポイントを押さえておきましょう。
- 登録支援機関の中心業務は生活支援・義務的支援
- 在留申請書類の作成は行政書士の独占業務
- 改正19条により「他人の依頼を受け、いかなる名目でも」有償作成は禁止
- 違反時は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
- 両罰規定により法人にも100万円以下の罰金
- 申請取次(提出代行)と書類作成は別の行為
- 適法運営には行政書士との連携が不可欠
登録支援機関の運営や特定技能の在留申請でお悩みの方は、ぜひ当事務所までご相談ください。行政書士法に適合した適切な業務フローの構築から、在留申請書類の作成まで、ワンストップでサポートいたします